第22章 BOY【S side】 EP.1
「櫻井ちゃーん!ご指名だよ!」
「ああーい」
ここはとあるマンションの一室。
ソファとテレビ、それから床には雑誌が転がってる。
そこには数人の若い男がたむろしてる。
リビングの奥の部屋から俺にお声が掛かった。
「じゃあ、どこいけばいいの?」
奥の部屋の入り口に立ちながら上着を羽織る。
「んー…あのさ?櫻井ちゃん、ビデオって興味ある?」
「はあ?」
ここは非合法の会社組織と言えばいいんだろうか…
表向きは違う会社なのだが、実態は売りをやっている。
そう、ここはデリヘルの待機部屋だ。
しかも、男専門。
「ビデオって…アレ?もしかして…」
「そ、イメージビデオってやつ。顔出し厳禁なら断るけど…」
事務テーブルに肘を付きながら、現場リーダーの藤ヶ谷くんがペンを鼻の下に挟んでる。
「えー?だって…人の前でホンバンすんだろ?俺、勃つかなぁ?」
「なあにぃ?櫻井ちゃん、興味アリ?」
「だって…金、いいんだろ?」
俺には…両親はもう亡い。
2年前、ふたりとも一遍に事故で亡くした。
親戚に騙され、死亡保険金はもうない。
妹と、幼い弟を抱えて昼間はバイト、夜はこうやって身体を売らないと生活していけない。
まだ17歳の俺は、どこにも正社員で雇ってくれないしね…
妹と弟はまだ幼いから、金のいい肉体労働に出るのも無理だった。
体を売るしか…ないんだ。