第20章 Eternal YOU~白光
寝室をノックする音が聞こえた。
「――はい」
涙を慌てて拭った。
「大野様、おはようございます」
入ってきたのはこの家の家令の松本だった。
「朝食のご用意を…」
「櫻井は?」
「ああ…櫻井は本日は休暇をいただいております」
「そうか…」
「なにか御用がおありでしょうか?」
「ああ…申し訳ないが、返すものがあるから…」
「左様でございましたか…ならば朝食の後にお伺いするよう申し伝えます」
「頼む…」
カーテンを開け放つと、松本は寝室を出て行った。
寝室のカウチの上には昨日着ていた制服が、きちんとクリーニングされて置いてある。
しかし、着替える気にならなかった。
そのままベッドで寝ていると、松本は寝室に朝食を用意してくれた。
「お加減が悪そうなので…このまま…」
「ああ…助かるよ…家には?」
「はい。主人より、ご連絡させていただいておりますので、ご安心を」
「そう…なら、よかった」
トレイの上に置かれた朝食を、ベッドに入ったまま食べた。
食事も…
ここひと月、味がしない。
だけど、昨日櫻井が出してくれた食事は…
温かかった…
食事が済むと、松本はトレイを運んで行った。
「食後のお茶は、櫻井がサーブさせていただきますので…」
そういって、微笑みを残して部屋を出て行った。