第3章 車の中でかくれてキスをしよう
ちょっと濡れているタイルの上をそっと歩いて、俺達はベンチに腰掛けた。
そこで海パンに着替えると、ニノはいきなりプールに飛び込んでいった。
「ちょっ…準備体操しろよ!」
「へーきだよ…さっきまで踊ってたんだから」
そう言うとスイスイ泳ぎだした。
「なんだよ…別に俺、入らなくていいじゃんなぁ…」
そのままベンチで座ってると、ニノがまたぶーたれた顔でこっちを見てる。
「はいはい…行きますよ…」
これ見つかったら、ぜってー怒られる…
プールの端っこから、足先からそろそろと温水に入る。
コンサートで踊ってちょっと火照った身体に、低めの温水が気持ちよかった。
「お…意外と…」
非常灯と外からの淡い光だけが差し込む屋内プール。
暗い中はちょっとだけ怖かったけど、でも悪くない。
少しだけニノに近寄って行く。
ニノは水面に浮かんで上を見上げてた。
「何見てんの?」
見上げると、天井は大きなガラスの天窓がついていて。
そこからまんまるの月が見えていた。
「あ…今日満月なんだ…」
俺も浮きながら上を見上げた。
チャプチャプと手を動かして移動しながら、俺達は水面を滑っていく。
月は俺達を静かに照らしてる。