第3章 車の中でかくれてキスをしよう
俺たちに対する態度が刺々しくて、時には楽屋の雰囲気をぶち壊すこともあった。
ただ、原因がなんなのか、皆わかってたから誰もニノを諌めるものは居なかった。
ニノが無理やり別れさせられた子が結婚するってことで。
本人に確認したわけじゃないけど、それは業界内では公然の事実で。
多分、別にあの時まで好きだったわけじゃないだろうけど、別れさせられた時のニノは、とてもひどい状態だった。
その時のことを思い出してしまったんだろうと、思う。
だからニノがちょっとくらい暴言を吐いたって、誰も何も言わない。
俺たち以外の人には絶対にそういう態度を取らなかったし、仕事にも絶対に影響がでないようにしてた。
だから俺達はニノのその不機嫌を、受け止めていたんだ。
だって、他では絶対に出せないだろうから。
それは皆わかってた。
ニノが一番甘えられるのは俺らだからって。
ある夏、地方へコンサートへ行っていた時…
ホテルに宿泊してた俺らは、それまでよくやってた部屋飲みもあんまりしなくなってて。
それぞれの部屋に引きこもってた。
ここが、多分若いころとの分岐点だったのかなと、今では思う。
部屋で新聞を読んでいたら、ノックの音が聞こえる。
出てみると、そこに立っていたのは不機嫌な顔をしたニノだった。