第3章 車の中でかくれてキスをしよう
「ニノおまたせ」
「あ、もういいの?」
あれから1時間近く経っていた。
「ごめんな。結構長引いたな…」
ニノはゲーム機をカバンに仕舞いながら、手を振った。
「全然。気にしないで」
立ち上がると、俺につづいて楽屋を出た。
「お疲れ様ー」
「お疲れしたー」
廊下に出ると、二人で肩を並べて歩く。
スタッフさんや取材の人たちに挨拶してエレベーターに乗り込むと、ふたりきりになった。
「明日、オフだって?」
「お、聞いた?」
「うん。珍しいね」
「まあね…めったにない平日休み、満喫するよ」
「ふふふ…実はね、俺も」
「え?翔ちゃんも?」
「明日の取材、ポシャっちゃったんだよ」
「あーそうなんだ…」
ふふっとニノは笑うと、俺を見上げた。
「じゃあ…翔ちゃんち、行ってもいい?」
「え…?」
俺たちは…昔、微妙な関係だったことがある。
あれはもう何年前のことだろう。
嵐が軌道に乗り始めて、何をやっても当たるって時。
あの頃の俺たちは、ただただ売れていくことに呆然としながらも、昔語り合った夢がどんどん実現していって有頂天だった。
そんなころ、ニノはちょっとだけ精神的なバランスを崩していた。