第3章 車の中でかくれてキスをしよう
「お疲れー」
「お疲れ様ー」
収録が終わると、段々と楽屋から人が居なくなっていく。
それぞれがやることが終わってしまうと、結構ドライな感じで帰っていく。
それは常のことだし、もう若くないんだから当然のことで。
若いころは、この後どっかご飯食べに行こうよとか。
そうやってしょっちゅうくっついていたものだけど。
今ではそんなこともなくなって。
週に何回か仕事で5人揃うことはあるけど、休みの日までメンバーに会うこともなくなった。
売れてしまったってこともある。
俺達が5人で遊んでたら、それこそ大騒ぎになってしまうことだってあるだろう。
…淋しいなと思うこともある。
だけど、俺達が望んだ未来に立っている今、これで良かったのだとも思う。
「翔ちゃん?帰らないの?」
「ん?ああ…今日は送りじゃないから…」
「そうなんだ。じゃあ、俺、送ってもらってもいい?」
「え…?いいけど」
「ありがとう」
そういうとニノは俺の隣に座った。
カバンからゲーム機を取り出すと、ぴこぴこ始めた。
「あ、ごめんな。俺、あとちょっとだけチーフと打ち合わせあるから…」
「うん。待ってる」
いつものごとく俺の方を見もしないで、ニノは答える。
そんなニノを残して、俺はチーフと打ち合わせを済ませて、タブレットに予定を打ち込んでいく。
「じゃあ、後…メンバーのスケジュール教えて?」
スケジュールを教えて貰って、それも打ち込んで打ち合わせは終了した。