第16章 ふたりでひとつ
今日の結婚記念日ディナーは和が全部やってくれた。
美味しい白ワインに魚介のパスタ。
それからスープとサラダも。
メインのラム肉のステーキは最高だった。
服部先生に料理を教わってるから、メキメキ腕が上がった。
撮影はもう終わってるけど、撮影中からちょくちょく料理するようになったんだよね。
ご両親が料理の先生をやっているから、和の血が騒いだのかもしれない。
料理をするにはぶきっちょな小さな手が、ちゃきちゃきと料理を生み出していくのは、見ていて面白かった。
「なに笑ってんのさ」
後ろから拗ねた声が聴こえてきた。
「和がかわいいなって思って」
「もう…どうしてそんなからかうんだよ」
「かわいいから」
「え?」
「俺の奥さん、世界一かわいい」
「ばっ…ばかっ…」
ドスドスと歩いてきて、俺の前のテーブルに何か置いた。
「あ」
「もう…これで最後ね?」
箱を開けると、小さなケーキが出てきた。
「これ作ったの?」
「そんなわけないじゃん。お菓子は習ってないもん」
「そっか…」
和はその小さなケーキに3本ローソクを刺した。
火をつけると俺を手招きした。
「一緒に消そう?」