第2章 翼をもがれた竜-episode0-
「喜多川の姐さんも言うねえ…」
「組長は慌てて姐さんにご挨拶に行ったようです」
嫌だ辞めたいといいながらも、こういう業界の義理を欠かさないのが、あの人の凄いところだ。
こういうバランス感覚が、若手のホープと言われる所以なんだろう。
「相葉、二宮居る?」
「はい。今日はショバ回るって、事務所に居ます」
「わかった。俺を待ってるよう伝えろ」
「へい」
シャワーをして身なりを整えてから、長部屋を出る。
若衆の松本と二宮が俺を待っていた。
「おう、潤も来てたんか」
「はい。若頭…ちょっと激しいんじゃないですか?」
くっくと松本が笑う。
二宮も笑いをこらえて下を向いている。
「お前らなあ。あの人がどんだけ可愛いかわかってねえんだよ…」
「ちょ、若頭っ…」
相葉が慌てて止めに入る。
組長と俺のことを知ってるのは、相葉と松本と二宮。
そして喜多川の姐さんの4人しか知らない。
「すまん」
「若頭の部屋、いきましょう」
4人で俺の部屋に入ってとりあえず一息つく。
「で。どう?なんかわかった?」
「まだですね…でっかいネタ掴めそうなんですが…」
二宮の目に力が入る。
「そしたら一番にお知らせしますから」