第2章 入学し・・・・・・き?
あれやこれやと、あっと言う間に終わってしまった赤髪さんの演目。
すっげーなマジで。
もし私が猫だったらブワッてなってたよ。なんて言うかもう鳥肌総立ち。ブワッて。
司会なのかなんなのか、誰かがマイクを持って何かを言い始める。
ギャラリーは今終わった赤髪さんの演目の熱のやり場を求めるかのように、その司会の掛け声的なあれに叫ぶ人も居る。
まあ、うん気持ちは解るよ。
赤髪さん、凄いもん。
同じステージ上に居た私でさえも、声援を送りたくなったくらいだし。
そうこうしている内に、ステージの前に居た赤髪さんが後ろに下がって来る。
うわー次私の番じゃん。
「・・・拍手してくれてるのは嬉しいんだが、いつまでしてるつもりだ?」
『・・・・・。
・・・、っぉうっ?
あ、すみません。凄いなカッコいいなーって考えてたら身体が勝手に・・・。
思わず見蕩れちゃってましたよ、危うく発狂しかけましたし。私もみんなみたいにギャラリーに居たらサイリウム振り回してますよ、きっと』
「・・・・・・そうか。
そこまで気に入ってくれたんなら俺も歌った甲斐があったってもんだ」
『今のを気に入らない人が居るとしたら、その人の気が知れてますね。
あんなにすっごいのに、気に入らないとかどうかしてますよ。うん』
「見かけに寄らず、ベタ褒めするんだな。小童。
それにその分じゃ緊張も解けてるみたいじゃねえか」
『きんちょう?
してる場合じゃなくなりましたよ、そんなの』
「?」
『だって、』
あんな凄いの魅せられて黙ってるなんて勿体無いじゃないですか。
赤髪さんの目を見て言い切る。
あー、やっばい。
歌いたい。誰が見てるとか、もういいや。
とりあえず歌いたい。
私がステージ上の前に歩けば、ギャラリーが会場から離れていくのが見て取れた。
まあ、いいや。
私は赤髪さんとは違ってまったく無名だ。
だから、なんだ。
私は歌うんだ。
誰が聞いていようと、構うもんか。
誰も見ていなくても、構うもんか。
乙狩くんに渡した、音楽データが元であろう曲が会場に流れ始める。
歌え。歌え。
息を吸って、歌い始めた時にギャラリーの前列に居た朔間さんと目が合った気がした。