第1章 プロローグ
ーーー時の政府、役員の会話
モブ「彼岸花ね…………」
重たく呟かれた言葉。
その言葉には明らかな疲労が滲んでおり、思わず隣にいた後輩役員がこえをかけた。
モブ2「どうかしたんすか?そんな、疲れた声出して」
オロナミンC奢りましょうか?と申し出れば、緩く断られた。
先輩役員は疲れた口調で続ける。
モブ「いや、本当に似合わない名前だなと」
モブ2「それは…………奴に似合わないんすか、それとも刀に似合わないんすか?」
奴、と呼んだ問題の塊を横目で見つつ、後輩役員は問いかけた。
モブ「決まってんだろ。奴にだよ。刀名なんて俺らから見て、良いも悪いもねぇだろうが」
モブ2「…………えー、菊一文字とかかっこいいと思うんすけど。」
モブ「ばっか、おまっ…………菊一文字は特別だよ。あー、どうせ担当に当たるなら菊一文字の方が良かったなぁ………」
モブ2「先輩、ほんっとすきっすよねぇ。新撰組。………というより、菊一文字の実装は決まってませんよ」
モブ「お前もだろ。………そういえば、そうだった」
モブ2「まぁ……………」
モブ「それよか。取りあえず、早くこいつを送り出さないと、俺らの方がもたないぜ」
先輩役員の見つめる先には、一振りの刀。
彼岸花と名付けられた政府お手製の刀は、完成したのがほんの10日前の癖にどういうわけか付喪神が宿っていた。
それだけじゃない、なんとその付喪神は女性なのだ。
ミルクティー色と本人が宣う長い髪に、水晶玉の様なオレンジの瞳。
服装は、然り気無く政府が寄せた三日月宗近の色違い……………を、もう少し地味にしたもの。
上が白で、下が黒だ。
16、7の少女の見た目をしたやつは、他の刀剣達と同じく絵にかいた様な美しさだ。
美少女だ。人形だ。見た目は。
見た目は。
モブ2「ほんっと。何で、あんな性格なんでしょうか…………」
モブ「それが解ったら未来学会で表彰もんだぜ」
古いネタだなぁ、と思いつつ後輩役員はため息を着いた。
モブ2「見た目は完璧なのになぁ……………」
後輩役員が呟いたその時………
ーーー二人が立ち話をしていた休憩室の扉が勢いよく吹っ飛んだ。
休憩室内の時間が止まる。
何度も見た光景に何を言うことも忘れ、コーヒーを飲む後輩役員。
先輩役員はその隣で額に青筋を浮かべた。
モブ「てめぇ!彼岸花!!!!」
怒鳴る先輩役員に、彼女は笑った。