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〈刀剣乱舞〉もしも、明日………

第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい


彼岸花は手を伸ばして、岩融の腕をつかむ。下に見える崖は底が見えず、真っ暗だ。
申し訳程度にはえているこれまたほっそい木に右手を絡ませて、落ちかけた彼を必死に支えようとする。
「まずい、止めるんだ!」
髭切が焦ったように言うが、彼岸花としてもそれどころじゃなかった。
「お、重い。いや、そういうレベルじゃないやばい………」
こんなときでも我を忘れず喋る自分に少し感心するが、そんなことを言っとる場合とちゃう本当にあかんやつや。
エセ関西弁と自らの肉体に限界を感じながら、彼岸花は必死に岩融を引き上げようとする。
「現在の状況は足一本と半分が地面から離れた状態の岩融を彼岸花が引き上げようとしているところだ。
え?崖の下にいるのを腕一本で支えてるんじゃないのかって?お前はアホか。こんな巨体を腕一本で支えられるわけがない。今の状況だって奇跡に近いのだ。もし、貧弱だと思ったやつがいたら名乗り出るべし。マッスル系イケメンの腕を握る権利をあげようじゃないか。」
「な、何を言っとるんだこんな状態で………!」
「独り言です」
彼岸花が間髪いれずに答えたとき、背後で獣の唸る声が聞こえた。
それが何か解らないほど、馬鹿じゃない。彼岸花はしかしそれでも、振り向かなかった。
だが、彼岸花が思っているよりもずっと奴は賢いようで………
「あっ………」
彼岸花が呆然と呟いた時には既に、唯一の頼みである木が折られていた。
斜めになっていた岩融はもちろんのこと、それを引っ張っていた彼岸花もグラリと傾いた。
一瞬の浮遊感、無重力状態。
だが、そんなものはまやかしだ。直ぐに、グンと体が落下していく。
「う、うおおおないあはたなあ!!!このやろぉ!やりやがったな!…………………………………空飛ぶスパゲッティモンスター教ーーー!!!!」
前に聞いた世界一おかしな宗教名を叫んで、彼岸花は岩融と共に落ちていく。
「岩融ぃーー!!!!彼岸花!」
ついで感は半端ないが、今剣が此方を覗きこんで叫んでくれる。
場違いにもそれを彼岸花が嬉しいと思ってしまった瞬間、グッと腕が引かれて誰かに抱きすくめられる。
彼岸花が岩融の顔を見上げた時、二人は森の木々に突っ込んでいた。
そこで、彼岸花の意識は落ちる。
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