第2章 はじめまして私の異能/太宰さん
「ぐあぁぁぁぁあぁ!? 冷てぇええぇ!? なんじゃっそら!」
強盗の一人が、妙に滑舌の悪い訛った声で叫び、背中を掻いてのけぞった。もう一人は足が完全に凍りつき、床から離れることが出来ずにひいひい言っている。他の強盗は、突然こおりだした仲間達をみて右往左往するばかりだ。フロアの異様な様相に、誰もが目を見張った。
「や、やめろっ! やめろぉぉおおぉぉ!!」
「きゃああああああ!!」
強盗の一人が錯乱し、めちゃくちゃに銃を乱射し始める。そいつの足元に転がっていたた幼い少年が悲鳴を上げる。逃げようにも両手両足はきつく縛られ、このままでは流れ弾に当たって死んでしまうだろう。
――人が、死ぬ。
私は文字通り背筋を凍らせた。せっかく能力を認められ、武装探偵社の一員になったというのに、この少年を、人質の人々を見殺しにするというのか。
太宰、敦ら武装探偵社の先輩社員が脳裏に浮かぶ。事務員のナオミでさえ、凛とした誇りあふれる表情をしていた。ここで戦わずして、何が武装探偵社だろう。
私はもう、弱虫の田舎者じゃない!
武装探偵社の社員なんだ!!
「たひゅ……けてぇっ……」
男の子が力なく呟いた。私は奥歯を噛み締め――そして、笑った。
「其の子を離しなさい!!」
細い声をありったけ張り上げて、強盗に向かって『氷』を発動させた。地面を蛇のように這い、氷は男の肢体に絡みつく。
冷気にあてられ、男はおびえながら手をばたばたとふるが効果は無い。圧倒的な力の差のもとに、男の全身は氷に包まれ、音はすべて飲み込まれた。
もはやこのフロアにおいて、私を意識しない者はない。あらゆる視線という視線が、期待、あるいは怯えを伴って私に絡みついていた。
「お、怯えたふりをしたって無駄なんですからね!」
私は内心の震えを懸命に堪えて、強盗たちを睨みつける。ここからは、反撃の時間だ!!
文豪よろしく、なぜか、言葉が脳裏に浮かぶ。私は衝動のまま口を開いた。
「異能力。――『雪女』!!」