第12章 初雪
「久しぶり、ユウスケ。」
僕に笑いかける顔が、
何だか、とても懐かしい。
「うん、久しぶりだね。今日は後輩指導?」
この時期になると、
受験勉強の息抜きに、
部活に顔を出す奴が多かった。
「うん、まぁ、指導までは行かなくても、本当、覗いてるだけ、かな。」
「そうか。」
「ユウスケも部活寄ったんでしょ?もう帰るの?」
「うん、もう引き継いだし、長居はしないよ。もう、帰る。」
「じゃあ、私も一緒に帰ってもいい?」
学校を出ると、すっかり空が灰色だった。
「寒いね。」
カナは、自転車を押す僕の横を歩いた。
東京の方は、まだ薄手のコートで
過ごせるようだ。
つい最近、ナナミから電話で、
「ね、ユウスケ。どっちのコートがいいと思う?」
画像を送ったから、どっちがいいか、
選んで、と。
どっちでもいいと思うが…
いや、どっちも似合う。
選べないな。
僕は思い出し笑いをしてしまった。
「ユウスケ、変わったよね。」
え?しまった。
思い出し笑いを見られた。
「ケイタにも言われたよ。」
自分の変化の理由がわかるから
まんざらでもない。
口元が緩んだ。
「ナナミだよね。」
カナは、僕を見つめた。
「ナナミは、ずっとユウスケが好きだったもの。」
カナは、少し前を歩き始めた。
「あ、中3の夏に告白されたから、その時は知ってるけど、6年間ってのは、知らなかった。」
「本当に!?」
カナは、振り向いた。
「信じられない…ナナミも苦労するね。」
カナは苦笑いした。
「だろうね。」
僕らは、二人で笑い合った。
「あ、僕、本屋に寄る。」
「うん…」
カナは何か言いたげだった。
ふと、頬に、冷たい感触があたった。
「あ。」
「あ、雪だ。」
僕らは、空を見上げた。
「カナ。」
今なら言えるかも。
カナは、僕の言葉を待っていた。
「僕は、ナナミが好きだ。」
僕の目の前には、カナがいる。
ずっとカナが好きだった。
でも、ナナミが僕の心に
転がり込んできたんだ。