第12章 初雪
「引退しても、顔出して下さいよ。」
稲葉から連絡が来た。
久しぶりに部室に向かった。
「あ、ユウスケ先輩!」
衣装担当のミカが、
僕の顔を見るなり、駆け寄ってきた。
「聞いて下さいよぉ、ユウスケ先輩~。」
僕が口を開く前に、
ミカの愚痴が炸裂した。
主に、稲葉の事だけど…
何やら、話し合いをしている。
3年生送別会の芝居の内容だ。
毎年、決まった内容をやるんだが、
その年のメンバーがアレンジをする。
「なかなか面白そうな内容だね。」
稲葉に声を掛けた。
「ユウスケ先輩には、まだまだ敵いません。」
それでも、稲葉は自信たっぷりな
顔をしている。
引き継いだばかりの頃の
硬い表情はなくなってた。
頼もしいよ。
「楽しみにしているよ。」
僕はみんなに声を掛け、
部室を後にした。
さて、駅前の本屋寄って帰るか。
部室から続く長い廊下。
その先に、体育館に続く渡り廊下がある。
そこを通らないと、校舎を出る事が出来ない。
ゆっくり周りを見渡しながら、
渡り廊下を進んだ。
その先に、
体育館を覗き込むカナの姿が見えた。
「…カナ。」
カナは、僕に気付いていた。
ゆっくり僕の方を向いた。
「久しぶり、ユウスケ。」
久しぶりに、顔を合わせたカナは、
ずいぶん大人っぽかった。