第19章 僕達の明日
「いいにおいがする。」
新居での初めての夜は、ナナがご飯を
作ってくれる、と張り切っていた。
「あ、ユウスケ、タッパー買うの、忘れちゃったよ。」
「タッパーなんて、どうすんの?」
「ビーフシチューたくさん作ったから、冷凍しておくの。ご飯も冷凍しておくから、チンして食べてね。」
なるほど。母さんっぽいな。
あと、野菜もキチンと食べないとね、不規則だから、なんたらかんたら言ってたけど、何だかんだと、ナナが毎日来るだろうから、あまり気にしていない。
あぁ、合鍵作ったのを、取りに行かないとな。
僕は、チャリに乗り、駅前のスーパーに向かった。
「毎度ありがとう~っ」
僕は、合鍵屋で合鍵を3本作り、それを受け取り、お店を出た。
あとは、タッパーか。
合鍵は、母さんと父さんに1本ずつ。
そして、もう1本は、ナナに渡す。
まさか、この僕が、こんな事をするなんて、
半年前には、思い付きもしなかったよ。
そう言えば、コウジさんとユカさんの結婚パーティーで、ブーケをナナにあげる、って言ってたな。
あれ、どういう意味だろうか。
「ナナ、ただいま。」
「おかえりなさい、ユウスケ。」
エプロン姿のナナは、嬉しそうに出迎えてくれた。一緒に暮らす訳ではないけれど、これから、こういう暮らしが始まるんだな。
何とも言えない感じで、くすぐったい。
ナナが作ってくれたビーフシチューを食べながら、お互いの近況を話したりした。
時間も遅くなるだろうから、前もって、ナナのお父さんに連絡をした。一緒にこっちに戻って来たから、おばあちゃんの家にいる事は知っていた。だから、迎えに来てもらえるよう、話をしておいた。
泊まらせないの?と、先生に突っ込まれそうだが…。
一人暮らしは、その為ではないから。
浮かれる訳にはいかない。
「あ、ユウスケ、パパ、もうすぐ着くって。」
帰らなくてはいけないから、切ない顔をしていた。
「ナナ。」
「ん、なぁに?」
「ナナの分の合鍵を作ったよ。ナナに渡す前に、お父さんに了解をもらうから。」
ナナは、嬉しいような、不思議な顔をしていた。
「ナナが来てくれるのは、嬉しいよ。だけど、それだけの理由で、一人暮らしを始める訳ではないから。」