第19章 僕達の明日
僕は今、待たされてる。
かれこれ、もう3時間だ。
「ユウスケくん、ごめんな。ここの先生は、いきなりスイッチ入って、いきなりスイッチ切れるから、会ってもらうタイミングが難しくて。」
畠山さんは、苦笑いだった。
今日は、これからお世話になる漫画家、藤守翔大先生に、挨拶する為に、仕事場に来ている。
しかし、先生は、僕達が来ている事に気付いていない。ただひたすら描き続けている。
3時間、ただひたすら、手を休める事もなかった。
アシスタントは、僕の他に男性2人いた。
挨拶はしてくれたけど、すぐに作業に戻ってしまった。
「ま、気長に待とうぜ。」
畠山さんは、ソファーにどっかり座り、
マンガを読み出した。
僕は仕事の邪魔にならない程度に、作業場を見学させてもらった。
男ばかりの作業場にしては、こぎれいで、
机の上も、キレイに整っている。
道具もキレイに使っている事もわかる。
「花本くんの席は、そこだよ。」
アシスタントの輪島さんが、一つ空いた
真新しい机を指差した。
「え、僕の机、もう用意してくれたんですか?」
「実はね、君に決まったその日に、先生が買いに行ったんだよ。」
もう一人のアシスタントの森さんが、小声で教えてくれた。
「ごめんな、もう少し、待っててくれよな」
輪島さん、森さんが、目配せした。
とても安心した。
実は、とても緊張していたんだ。
僕を無視していると思った、先生の背中が、とても温かく大きく感じた。
「いくらでも、待ちますよ、先生。」
聞こえるか、どうか位の声の大きさで、
先生の背中に言った。
その後ろでは、畠山さんがニヤニヤしてた。
今の僕に、藤守先生を、紹介してくれた訳がわかった。畠山さん、ありがとうございます。
「よしっ!終わったぞー!」
ウォォッ!と叫び、両手を万歳し、立ち上がって、後ろに振り向いた。
「花本君!お待たせ!」
僕に笑いかけた先生の、人懐っこい笑顔は、
ケイタの笑顔とダブって見えた。