第10章 lt laid the rail
「………」
翔父「………」
帰りの車内。
俺と父さんは一言も口を聞かないまま帰路に着こうとしていた。
今日の出来事が頭から離れない。
影山「………」
影山も空気を読んだのか、何も言わずに運転をしていた。
後数分で自宅という所で…父さんが口を開く。
翔父「翔」
「………」
翔父「何が気に入らないんだ」
「………」
翔父「翔!」
「言わなくても分かってるだろ。あれ…何だよ。まるで…まるでお見合いじゃんか」
翔父「だからなんだ」
「は?父さん…!俺に何の断りも無しにお見合いなんて…。俺まだ大学入ったばかりだよ?彼女だって高校3年じゃないか!」
翔父「今すぐに結婚しろとは言ってない。お前が大学を卒業するまで待つと言ってる。彼女はそれまで花嫁修業するらしい。素晴らしいじゃないか」
「素晴らしい…?何処が?父さん俺の気持ちは?俺の気持ちは考えてないの!?」
翔父「じゃあ言ってみろ。お前の気持ちとやらを」
「俺は…結婚なんて考えてない。少なくとも…大学卒業して仕事…安定するまでは」
そうだよ…。
結婚するかどうかなんて分からない。
だって俺は…。
翔父「まだ…報道の仕事やらに就く事にこだわってるのか。もっと向いてる仕事があるだろう」
「俺がやりたいんだよ!回りに散々言われて来た。『お父さんの後は継がないのか』って。考えたよ。でも…俺は報道の仕事がやりたいんだよ。だから経済学部に進んだ。父さんにも話しただろ」
翔父「お前には向いてない。それよりも総務省に来れば…将来の安定は約束されてるんだぞ。やりがいもある」
「それは父さんの意見だろ」
翔父「それに…あの子との結婚はお前の将来の為にもなるんだ」
「………どういう事…?」
ようやく父さんの視線が俺の方を向いた。