第10章 lt laid the rail
松岡「ぼん申し訳ありません…!」
部屋に入るなり、松兄はおいらに土下座した。
「は?」
松岡「お嬢さんとの事…隠して…本当に…」
「ちょっとちょっと…。おいら別に咎めるつもりでここに連れて来たんじゃないよ?」
松岡「………」
それでも松兄は土下座を崩さない。
「………さっきの姉ちゃんの言葉…気になってさ。『待ってるから』って…言ってたから」
松岡「………」
「ちゃんと付き合ってるなら…おいら何も言わないよ。ただ…遊びなら…黙ってられないかな。姉ちゃんには幸せになって欲しいから」
松岡「………」
ゆっくりと…松兄が顔を上げる。
「………どっち?」
おいらは松兄の前にあぐらをかいて座った。
松岡「………お付き合いは…してません」
「………という事は…」
松岡「でも…お嬢さんを…愛してます…心から…」
振り絞る様な声で松兄が答える。
松岡「しかし…はっきり伝えては…いません…」
「どうして?」
松岡「………」
「………松兄」
松岡「………ぼんなら…お分かりになられるかと思います。私の…気持ちが…」
「………好きだから…一緒に居られないって事?」
松岡「………」
松兄は静かに頷いた。
松岡「お嬢さんには…この世界とは違う場所で…幸せになって貰いたい。こんな…裏家業で…辛い思いはさせたくないんです。愛する人と…幸せになって欲しいんです」
「その愛する人は松兄なんだろ?」
松岡「………」
「松兄の気持ちは分かる。でも…姉ちゃんが松兄と一緒に居る事を望んでんだろ。だったら…一緒になればいいじゃんか」
松岡「………しかし…」
「一緒になる気がねぇんだったらさ…何でこそこそセックスしてんだよ。それこそ遊びより達悪いんじゃねぇの」
松岡「………」
何も言わずに黙り込む松兄をおいらは黙って見下ろしていた。