第1章 夜明け前
松本組長「おぉ、智ぼん。久し振りだな」
「ご無沙汰してます」
父ちゃんの部屋に入ると…父ちゃんと松本組長が向かい合って談笑をしていた。
穏やかに話してる様に見えて…その空気はぴりついている。
組長の隣には…息子の潤が座っていた。
潤「………」
組長「潤」
潤「………久し振り」
「久し振りです」
おいらは頭を下げ、父ちゃんの隣に敷かれた座布団に座った。
潤「………」
睨み付ける様においらを見つめてくる潤。
おいらはあえて気付かない様に視線を合わせなかった。
智父「………で、何の話だったかな」
松本組長「ああそうだ。すまない。これは噂なんだが…近々関東昇龍会の会長から…呼び出しがかかるらしい」
智父「成る程」
松本組長「どうやらそこで引退を表明するらしいとかいう話なんだがな」
智父「そうか…。会長も体調安定されてないみたいだからな。それで…どうしてそんな話をうちに?」
父ちゃんが尋ねると…松本組長は含みのある笑みを見せた。
松本組長「その時は…うちと組まないか?大野組と松本組…どちらからか昇龍会会長を立候補させようじゃないか」
智父「………」
「………」
そういう事…か…。
松本組長「お互い悪い話じゃないだろ?昇龍会のナンバー1とナンバー2が手を組めば…昇龍会はもっと大きくなる」
智父「………」
すると…父ちゃんがおいらと潤を交互に見つめた。
智父「智。潤くんも…ちょっと出てなさい。2人で話したいから」
「………はい。失礼します」
おいらは頭を下げ部屋を出た。
後ろから…潤の足音が聞こえていた。