第1章 夜明け前
ー智sideー
組員「坊っちゃんお帰りなさいませ!」
「ただいまー」
並んで頭を下げる組員にヒラヒラ手を振りながら…おいらは自分の部屋へと戻って行った。
「はぁーあ…眠い…」
ベッドに横になると直ぐにまどろんで来る。
けれどそれはノックの音で妨げられた。
「はーい…」
松岡「ぼん。お帰りなさいませ」
「松兄。どしたの」
松岡「いつも言ってますが松兄は止めて下さい」
「いいじゃん別に」
松岡「俺がオヤジに叱られます」
「面倒くせぇなぁ…だったらぼんも止めろよ。おいら嫌いなんだって」
松岡「それも出来ませんから…」
うちの組の若頭・松岡昌宏、松兄。
物心ついた頃からうちに来て…何かとおいらの側に居てくれる。
イケメンで頭も切れて…たまに料理も作ってくれたりもしてたけど…若頭になってからは忙しいみたいで会うのは久し振りだ。
松岡「それよりぼん。今松本組の組長と…松本のぼんが来てます」
「………は?」
松本の名前が出た瞬間、おいらの目が冴える。
「………何しに来たんだ」
ゆっくりとおいらは身体を起こした。
松岡「それがよく…今オヤジと話してます」
「分かった。行く」
松岡「お願いします」
おいらは立ち上がり、身支度を整えて松兄と部屋を出た。