第7章 極道の世界
「………」
松岡「………」
車内はシンと静まり返ったまま。
俺達は特に会話を交わす事無く、車は俺の家まで向かっていた。
今日は…色んな事がありすぎたな…。
でもきっと…上手くいくよね俺達…。
松岡「櫻井さん」
「あ、はい」
顔を上げるとミラー越しに松岡さんと目が合った。
松岡「ご自宅の近所までで大丈夫ですか?見られると…色々面倒でしょうから」
「そうですね…。すみません気を使って頂いて」
松岡「いえ」
再び訪れる沈黙。
松岡「櫻井さん」
唐突に呼ばれて驚いてしまう。
「はい!」
松岡「その…ぼんとは…」
「はい…」
松岡「ぼんとは…これからどうするおつもりですか」
「え…」
松岡「分かったでしょう。極道と付き合うという事がどういう事か。好きというお気持ちだけではどうしようも無い事もあるんです」
「………」
松岡「ぼんとは…これっきりにされて下さい多分今頃オヤジも…ぼんにその話をされてると思います」
「………」
松岡「櫻井さん…」
「そんなに…駄目なんですかね…極道の息子と警視総監の息子だから?男同士だから?跡継ぎだから?」
松岡「………」
「分かりません。俺はただ…智くんが好きなんです。理由なんてない。好きなんです。離れるのは…無理です」
松岡「………」
気が付くと車は路肩に停まっていて、辺りを見渡すとうちから100メートル程離れたコンビニの駐車場だった。
「………すみません。送って頂いてありがとうございました」
松岡「いえ」
「失礼します」
俺は頭を下げて車を降りた。
松岡「櫻井さん」
車を見るとパワーウィンドウを下げながら松岡さんがこちらを向いていた。
松岡「きつい言い方して…すみません」
「………いえ…」
松岡「さっき言った事には…変わりはありませんが…櫻井さんの気持ちは…よく分かります。どうしようもない…好きだと言う気持ちが」
「………松岡さん…」
松岡「でも…好きだから…愛してるから…離れなきゃいけない時もある。それもひとつの愛だと…私は思ってます」
「………それって…」
松岡「失礼します」
そのまま松岡さんは走り去ってしまった。
彼の言葉の意味を考えながら…俺はその場に佇んでいた。