第7章 極道の世界
ー翔sideー
ヤクザの組長だから…もっと怖い人だと思ってた。
でも実際会ったら…凄く穏やかな口調で話す、智くんによく似た人だった。
でも…やっぱり組長なんだと…そう思った。
智父「妾にでも何にでもするがいい。結婚して組は継いでもらう」
妾…?愛人?
俺が上手く飲み込めずにいると智くんが声を上げて立ち上がる。
智「父ちゃん!!ふざけんなよ!!翔くんを馬鹿にするな!!」
智父「ふざけてなどいない」
智「何が愛人だよ。ふざけんな!!おいらは翔くんをそんな風に扱うつもりはない!!」
智父「お前の隣に立つ人間は…それなりの度胸と統率力を持った女でないといかん。悪いがその子に何が出来る?お前に守られてばかりだ。何も出来ない。お前はどうだ?その子を守れるのか?今日みたいな事がまた起こるぞ。2度、3度。お前の隣に立つとはそういう事だ。お前はこの世界を何も知らないその子にまた同じ目を味あわせる事になるんだぞ。大切なその子を。守りきれるのか」
智「………」
智くんが唇を噛み締めながらぎゅっと拳を握る。
智父「櫻井くんと言ったな。すまない。しかしこれが現実なんだ。君を巻き込んでしまったら…君の親御さんが悲しむぞ。傷は浅い方がいい。別れるなら今の内だ。嫌なら…日陰の存在になる覚悟を決めなさい」
「………日陰の…存在…」
智父「智は組を継ぎ、結婚して子供をもうける。それを覚悟するんだ。表に出てはいけない。妾とはそういう事だ覚悟があるんなら…何も言わない」
「………」
智「好きなんだよ…。愛してるんだ。愛人になんて…出来る訳ないだろ」
うつ向いたまま、智くんは振り絞る様に呟く。
智父「だったらなおさらだ。覚悟も決めずにその子を巻き込んだお前の責任だ。櫻井くん。 君の親御さんだって反対するに決まってる。息子がヤクザの男と付き合うなど…」
翔「………父に言うつもりは…ありません。反対するに決まってる。それに…職業柄きっと迷惑がかかるから…」
智父「職業柄…?」
翔「………警察官の…官僚です…」
するとお父さんの顔色が変わる。
智父「警察の官僚…。櫻井…まさか君の父親は…警視総監の櫻井俊!?」
「え…」
お父さんは驚いた顔で俺の父さんの名前を口にしながら立ち上がった。