第6章 Oasis in the desert
智「翔くんごめん」
「え…きゃっ!」
いきなり智くんの片手が俺を強く突き飛ばす。
勢い良く俺は後方に転んでしまった。
「さ…智くん…!」
4人…5人?囲まれた男達を相手に智くんは乱闘を始めた。
「智くん!」
潤「おっと。邪魔すんなよ」
いつの間にか俺の後ろに回り込んだ松本が俺の腕を掴んだ。
「い…痛い…離して下さい…」
潤「動くなっつってんだよ。俺に逆らうな」
「っっ…」
低い声で脅され、顎を掴まれる。
彼の鋭い眼光が…俺を真っ直ぐに見つめた。
潤「………あいつが特定の恋人作るなんてな…こんな時期に。しかも男…くくっ。面白れぇな」
「………離して下さい…」
潤「名前。何だ」
「………知らない…」
潤「言え」
「いった…!」
腕を思いきり後ろに捻られる。
智「翔くんに手出すな!」
智くんが叫ぶ。
その足元には既に2人が伸びて倒れていた。
潤「邪魔しない様に押さえてるだけだよ。へぇ…翔か…」
楽しそうに松本が笑う。
潤「おい翔。あいつからは身を引いた方がいいぞ。あんなボケッとした顔してるくせにあんなに凶暴だ。それにあいつはうちと戦争してるのに何も考えずにお前と堂々と付き合ってる。これからこんなんじゃ済まないぞ。このままだとお前…巻き込まれて死ぬぞ。大野組は一般人が巻き込まれる事なんて何とも思わないんだからな」
「さ…智くんはそんな人じゃない…」
潤「現に前に巻き込まれて死んだ一般人がいるんだからな。そんな人間なんだよ。お前の愛しの智くんは」
「うるさい!」
俺は松本を突き飛ばし、その頬を思いきり殴った。
潤「………いてぇなこら…」
「そんな事どうでもいい!!あんただって一緒だろ!!同じヤクザなんだから!!ううん…こんな卑怯なマネするあんたの方がよっぽどタチ悪いよ!!」
潤「………あんだとこら」
彼に鋭い目で見つめられる。
潤「調子乗んなよお前。泣かせてやろうか」
「あぅっ…!」
捻られた腕に彼の力が食い込んでいった。