第5章 Ardent Love
ー智sideー
翔「んー…やだ…」
「んふっ…ほら…」
部屋の入口で出て行こうとするおいらの服の裾を掴みながら翔くんは尚もキスをしてくる。
「翔くん…ん…ほら、影山さんが見てるって…恥ずかしい…」
翔「やだぁ…いいもんバレたから」
おいらに掴まって執拗にキスしてくる。
何か…すげー楽しい…。
バカップル…。
影山「翔様。子供ではないのですから」
翔「うるさい影山ぁ…」
「夜電話するから。ね?」
翔「むー…分かったぁ。じゃあ最後」
「しょうがないなぁ…」
翔「んー…」
ぶちゅっと最後のキスをしておいら達は離れる。
翔「じゃあね智くん。電話待ってる」
「おう。じゃあね」
そしておいらは手を振りながら影山さんに連れられて部屋を出た。
影山「………」
「すみません…ご迷惑をお掛けして」
何も言わずにおいらの前を歩く影山さんの後に着いて歩く。
大階段を降りた所で影山さんが急に立ち止まった。
影山「………今から話す事は…オフレコでお願い申し上げます」
「え?あ、はい…」
振り返った影山さんの瞳が…鋭く光る。
影山「………お2人の気持ちは…充分に理解したつもりです。大野様も本気だと。翔様に協力してくれと言われたからには…私も全力を尽くします。しかし…出来る事なら…大野様には身を引いて欲しい」
影山さんが…おいらに深く頭を下げる。
「………おいらが…極道の息子だからですか?」
影山「いいえ………大野組の…大野守の…息子さんだからです」
「え…?」
影山「大野組だけは…受け入れられません。きっと…お2人は後悔する事になる」
「………どうして…」
影山「これ以上は…私の口からは申し上げられません」
銀縁眼鏡を直しながら影山さんが顔を上げた。
「影山さん…」
影山「それでは私は仕事に戻りますゆえ」
そのまま影山さんは…パーティー会場へと戻って行った。
おいらは暫くの間…言葉の意味を理解しようと佇んでいた。
そしておいらが影山さんの言葉の意味を知るのに…そう長い時間は掛からなかった。