第5章 Ardent Love
「………」
ゆっくりと彼が俺に背中を向ける。
「………それって…」
智「………おいらの父親は…大野組4代目組長、大野守。おいらはその息子。多分…5代目継ぐ事になると思う」
彼の背中に描かれた物から…俺は目が離せなかった。
ゆっくりと近付き…その背中に触れる。
「これ…もしかして毘沙門天?」
智「よく分かったね」
「うん」
智「………翔くん」
彼が正面を向き、俺の手を握る。
智「君は…警視総監の息子。おいらは…ヤクザの跡取り。それでも…平気?」
「………」
智「ごめんな…。こんな卑怯な事して。でも…もしかしたらこれから色々面倒な事も出てくるかもしれない。もし君が嫌なら…」
「分からない」
智「………」
「そんなの分からないよ。これからどうなるかなんて。でも…分かってるのは…俺は貴方が好きなんだよ。あの日逢って直ぐキスしたのだって…さっき…あんなキスしたのだって…ただ…貴方が好き。それだけなんだよ…警視総監の息子とか…ヤクザの息子とか…分かんない…」
智「翔くん…」
そのまま腕を引き寄せられ、彼の腕の中に収まる。
「このままずっと…側にいれたら…それだけでいい。智くん…」
智「おいらも…君と一緒に居たい…何も…考えたくない」
「智くん…キスして…」
顎を持ち上げられ、唇が重なる。
この瞬間…俺達の恋は一気に燃え上がったんだ。
ただ…智くんと一緒に居たかった。
それだけだった。
でも…俺達の回りは…それを許す事さえも…してくれなかったんだ…。