第5章 Ardent Love
ー智sideー
「ふぁ…ねみぃ…」
慎吾「こら」
大口で欠伸をすると隣の慎吾に小突く真似をされる。
「だって暇なんだもん…立ってるだけじゃん」
慎吾「それで金普通より余計に貰えんだぞ。美味しいバイトだろ」
「そうだなぁ…画材と…粘土…後は…新しいルアーも欲しいなぁ」
慎吾「ははっ」
小声で話してるとバイトリーダーがやって来る。
バイトリーダー「お前ら。そろそろ交代で休憩回していいよ」
慎吾「はい」
「はぁーい」
慎吾「どうする智」
「おいら後でもいいよぉ」
慎吾「じゃあ俺が行こうかな…」
慎吾が伸びをしながら奥のパーティー会場を見つめる。
慎吾「しっかし凄い顔触れだな。息子が大学に合格した位で」
「何処の大学だっけ?」
慎吾「慶應義塾大学の経済学部だってさ」
「ほぇー…」
慎吾「すげーよな。こんな広い家で贅沢三昧で…将来も安泰。悩みや不満なんてねぇんだろな。あ…あいつじゃね?噂のボンボン息子」
「ん?」
慎吾が指差した方を見ると…真新しい高そうなスーツを着た男の子が大階段を上って行くのが見えた。
その横顔を見た時…おいらの心臓は止まりそうになった。
「慎吾…」
慎吾「ん?」
「ごめん。やっぱおいらが先に行く」
慎吾「え?」
「わりぃ!」
慎吾の答えを聞かずにおいらは走り出した。
大階段を上り、跡を追った。
「………やっぱり…あの子だ」
自室だろうか。1番奥の部屋へと歩いて行った。
おいらは静かに…その子の後を追った。
おいらに全く気付かずに部屋のドアノブを掴んだから思わずその腕を掴む。
「え…!?」
ヤクザの血なのか…おいらは無意識にその子の口を押さえ部屋にスッと入った。
翔「んーっっ!!んんっっ!!」
その子を押さえたまま、おいらは帽子を取る。
「………久し振り。驚かせてごめんね」
大きな瞳が更に見開かれながらおいらを見つめてた。