第4章 それぞれの想い
ー潤sideー
荒れていた。
いつになく俺が荒れているのは自分でも分かる。
「もうねぇのかよウイスキー」
空になったグラスを隣に座る旬に突き付ける。
旬「ぼん。そろそろお止めになった方が…」
「うるせぇ!誰もそんな事聞いてねぇだろ!!」
思いきり旬の顔に投げ付けると、勢いよく旬のおでこに当たったグラスは見事に砕け散り、音を立ててフローリングに散らばった。
見ると旬の額から…血が出ていた。
旬「………すみません」
「………ちっ。もう寝る」
俺は立ち上がり、そのまま部屋へと戻った。
電気も付けずにベッドの横になる。
「くそっ…何でなんだ」
ヤクザの世界に跡取りとして産まれた俺は幼少期から跡目を継ぐ人間になれと父親から厳しく躾られてきた。
組長としての度量、威厳、実力。
父親に何度も殴られ叱られながら俺はそれを身に付けていった。
松本組を継ぎ…いつから関東昇龍会の会長の座を継ぐ事。
それが俺の役目だと…思ってた。
けれどそれはあいつに…いつもふにゃふにゃしてるあの男に奪われるなんて…!
俺の何があいつより劣ってるって言うんだ。
会長のじじぃ…俺の事も可愛がってくれていた筈だったのに…。俺よりあのチビを会長にしようなんて。
恥をかいた。
俺も親父も。
大野組…許さない。
戦争だ。
絶対ぶっ壊してやる。
でも…ちょうどいい機会でもあった。
大野組にはあいつが居るから。
俺の従順な…駒が。
俺は胸ポケットからスマホを取り出し、電話を掛ける。
案の定、そいつは1コールで電話を出る。
『………坊っちゃん』
「………そっちはどうだ」
『………特にまだ動きは…ありません』
「そうか。何かあったら直ぐに連絡するんだぞ」
『はい。直ぐに坊っちゃんに』
「いい子だな。来週一度迎えに行くから。それまでに出来るだけ沢山の情報つかんでおくんだぞ」
『はい』
「………可愛がってやるからよ」
『………はい』
電話の向こうからでも恥ずかしそうにしてるのが笑える。
「じゃあ宜しくな」
そう言って電話を切る。
待ってろよ大野。
関東昇龍会の会長は…松本組が貰う。
そう誓いながら…俺は目を閉じた。