第24章 番外編ー修と智宏ー
連れて来られたのは…突き当たりにある部屋。
中に入ると…机とテーブル、ベッド。
そして…乱雑に置かれた絵の具や画用紙、粘土。
「………何…」
智宏「おじさんの部屋」
「え…」
智宏「じいちゃんがそのままにしておきたいから使ってた時のまんまなんだって。おじさん…美大に通ってたから。絵の具とか粘土…15年前のまま」
「………じゃあ…兄さんがこの家で過ごしてた時…ここで…」
智宏「多分ね」
「ここで…兄さんが…」
部屋を見渡していると、智宏が机の引き出しを開け、何かを取り出して俺に渡した。
「何…」
智宏「見てみ」
受け取ると…それは1枚の写真。
「………兄さん…」
そこに写ってるのは…まだ元気だった頃の…兄さんの写真だった。
智宏「引き出しの奥にしまってあったの…俺が小さい頃に見つけてさ」
そこには…カメラに最高の笑顔を向ける兄さんの顔。
この部屋で撮られただろう写真。
「綺麗…」
俺の知らない…兄の顔。
綺麗な…綺麗な笑顔。
智宏「それ見た時思ったんだよね。こんな笑顔を向けてるこの人は…幸せだったんだって。こんな笑顔をさせるおじさんも…幸せだったんだろーなーってさ…」
「兄ちゃん…」
智宏「知ってる?君のお兄さんが亡くなった後…叔父さんは自分で…自分の命を絶ったって」
「………うん…」
智宏「きっと…1人にしたくなかったんだよ。君のお兄さんを。あの世で…幸せになろうって…そう思った筈だよ。すげぇよな。命を掛けてまで人を愛せるって。俺は…そんな叔父さんを誇りに思ってるよ。父さんと変わらない位にね」
命を…掛けて…。
「兄ちゃん…幸せだったんだ…」
智宏「そうだよ」
智宏が俺に優しく微笑んだ。
その笑顔が凄く…凄く優しかったんだ。とても…。