第21章 雪の華
数人の若い男性を伴って中に入って来た男性。
翔父「………大野」
まさか…大野のお父さん…?
影山「………」
智父「線香…あげさせてくれ」
翔父「………ああ」
そのまま2人で祭壇へと歩いて行く。
俺と影山さんも後に続いた。
静まり返った会場で…大野のお父さんが翔ちゃんの遺影を見つめながらお焼香をする。
それが終わると…大野のお父さんはおじさんの方を振り返った。
智父「………」
翔父「………今度…私も線香…上げさせてくれないか?」
智父「………いいのか」
翔父「ああ。翔の…大事な人だから」
影山「………旦那様…」
翔父「………あの子が死んでから…ずっと…あの子の部屋で過ごした。馬鹿だよ…。息子に死なれて…やっと自分の愚かさに気付くなんて…」
「………」
翔父「私はずっと翔を苦しめていたんだ…。翔も…陽子も…。間違っていたのは…私だった………私の思い上がりで…君の息子も死なせてしまった。本当にすまない」
そしておじさんが…大野のお父さんに頭を下げた。
翔父「すまない…」
智父「………息子は…智は今幸せにしている。翔くんと。だからもう…いい。お前がそう思ってくれて…喜んでるよ」
翔父「ありがとう…。それともうひとつあるんだ。お前を呼んだ理由は…」
智父「どうした」
翔父「2人の墓を…作ってやりたい。一緒に眠れる様に。2人だけの墓を」
「おじさん…」
智父「………きっと2人が喜ぶな。私からもお願いするよ」
翔父「分かった」
そして大野のお父さんは葬儀場を後にした。
会場にまた静寂が残る。
翔父「相葉くん」
「はい」
翔父「君にこれを」
そして俺に差し出された封筒。
「これ…何ですか?」
翔父「翔が家を出る前にな。書いていたみたいだ。家族全員と…君に宛てた手紙だ」
「え…」
そこには翔ちゃんの字で…『雅紀へ』と…記されてあった。