第21章 雪の華
ー雅紀sideー
ガランと静まり返った葬儀場のホール。
そこで缶コーヒーを飲みながらぼんやりと窓ガラスから外を眺めていた。
お通夜も葬式も…凄い人だった。
大野の葬式も…終わったのだろうか。
数日前の映像が頭の中で鮮明に蘇る。
夜中におじさんから掛かって来た翔ちゃんの失踪の電話。
大野と一緒に違いないと…おじさんに捲し立てられ、2人が出逢った場所…大野の大学へと俺は1人で駆け付けた。
講堂の裏で…2人は寄り添う様に抱き合って…息絶えていた。
それを見て崩れ落ちる俺の目には…2人の死に顔は何故か幸せそうに見えた。
「翔ちゃん…」
会場の祭壇に飾られた翔ちゃんの遺影。
俺の大好きだった…優しくて…可愛い笑顔の翔ちゃん。
今も…同じ様に笑顔でいる?
大野と一緒になって…幸せ?
「相葉様」
声を掛けられ振り返ると…そこに影山さんが立っていた。
影山「これで私は失礼致します」
「そうですか…」
影山「………ご連絡頂き…ありがとうございました」
「いえ」
影山「………私が…2人が逢う様に仕向けてしまったゆえ…こんな事に…」
眼鏡を直しながら影山さんが呟いた。
影山「私は…間違っていたのでございましょうか…」
「貴方のお陰で…最後に2人は一緒になれた。きっと…感謝してると思いますよ」
影山「………」
「俺は知らなかったから…『最近連絡取れないな』位にしか思ってなくて…。もっと…相談に乗っていれば…」
影山「2人を発見なされたのは相葉様でございます。翔様の1番の親友である貴方に見付けて頂いて…翔様はさぞかし感謝されていると思います」
「そうだと…いいですけど」
影山「………では…私はこれで」
「あ…はい」
影山さんに頭を下げた時…駐車場に停まる一台の黒塗りの車。
影山さんと2人でその車を見つめた。
すると控室からおじさんがやって来る。
翔父「………来たか。大野」
「え…?」
車の中から出て来たのは…和装の喪服に身を包んだ…大野によく似た目元の男性だった。