第21章 雪の華
ゆっくりと唇を離して翔くんの顔を見つめる。
「………愛してる…」
翔くんの口元の血を親指で拭う。
「うん。やっぱこっちの方が美人だよ翔くんは」
そっと頬を撫でながらその安らかな寝顔をいつまでも見つめた。
気が付けば雪がさっきよりも多くなってきた気がする。
翔くんの身体に…少し積もっていた。
舞い降りた雪が翔くんの身体に触れると…血を吸い込んでパッと綺麗な赤に染まる。
まるで花が咲いた様だった。
「雪の花…。雪の華みたいだね翔くん」
フッと笑みが溢れる。
「………ありがとう翔くん」
そしてまたその身体を強く抱き締めた。
その時にポケットの固い感触にやっと気付く。
「あー…。返すの忘れてた…」
ポケットから取り出したのは…おいらが使っていた拳銃。
「………父ちゃんごめんな。約束…守れそうにない。でも…許してくれるよな…」
翔くんの身体を抱き締め、銃口をこめかみにあてがう。
「………翔くん…今行くよ…」
そしてゆっくりと引き金を引く。
強い衝撃と共に…おいらの視界が真っ白になった。