第21章 雪の華
ゆっくりと開かれたその大きな瞳がおいらの姿を捉えた時…翔くんは嬉しそうに微笑んだ。
翔「智くん…。やっと逢えた…」
「翔くん…!!」
翔「げほっ…」
翔くんの口から血が吐き出される。
「誰が…誰がこんな事…」
翔「いいの…。俺は…今凄く幸せ…。だってやっと…智くんと一緒になれるんだから…」
「翔くん…」
翔「智くん…ぎゅってして…?」
「うん…」
おいらは腕の中のその身体を強く抱き締めた。
翔「智くんの…匂い…」
「っっ…」
翔「ねぇ…智くん…」
「ん…?」
身体を少し離して翔くんを見つめる。
翔「今日…何の日か…知ってる…?」
「当たり前じゃんか。丁度1年前に…ここで…おいら達出逢ったんじゃないか…」
翔「覚えててくれたんだ…」
「忘れる訳ねぇよ」
翔「ふふっ…ごほごほっ…」
そしてまた溢れ出す血。
「もういいから。喋るな翔くん…!」
視界がよく見えない。
頬を熱いものが伝う。
翔「智くん…」
「1人になんかさせない。一緒だ。これからはずっと2人だけだ。2人だけの世界に行こう。もう…誰にも邪魔されないんだ…」
翔「………2人…だけ…?」
「そうだよ。おいらと翔くんしか居ないんだ。そこに…行こう…」
翔「………うれ…し…」
段々と…翔くんの呼吸が弱くなっていく。
翔「………待ってる…」
「うん。何処にも行くな。追い掛けるから」
翔「もう…待つのは嫌だから…早く…来て…ね…」
「直ぐ行くよ。心配すんな」
ゆっくりと翔くんの目が閉じていく。
翔「智くん…愛して…る…」
「愛してる。愛してる…未来永劫…ずっとずっと…愛してる…」
おいらは顔を近付け、ゆっくりと唇を重ねた。
柔らかい…でも冷たい翔くんの唇の感触。
すると、おいらの腕の中から…ダラリと翔くんの手が垂れ下がった。