第20章 2人の道
「………これで…終わりか」
机を立ち上がり、辺りを見回す。
産まれた時から…今日まで。
毎日過ごした部屋。
智くんと気持ちを伝え合った部屋。
初めて…結ばれた部屋。
沢山の想い出がこの部屋にある。
でも…もう今夜で終わり。
封筒を机の上に並べ、立ち上がる。
2番目の机の引き出しの裏から…メモ紙と鍵を掴みポケットに忍ばせた。
美樹さんは…『明日こそ…貴方の物になります』と、そう言い残して部屋を出て行った。
ごめん美樹さん…。
俺達には…もう明日は無いんだ。
彼女は本当に素敵な人。
お嬢様育ちでも…ワガママでも傲慢でもない。
思いやりのある優しい人。
こんな俺を…好きだと言ってくれた。
でも彼女に相応しい相手は…きっと居る。
俺の事は憎んで…忘れて欲しい。
俺は立ち上がり、部屋の扉に近付く。
既に電子ロックの掛けられた部屋。
内側からは開かない。
「誰か居る?」
声を掛けると向こうから返事がする。
『翔様。どうされました?』
「ごめんトイレ」
『かしこまりました』
ピーッという音と共に電子ロックが外れ、扉が開かれる。
『こちらへどうぞ』
手招きをする執事の腕を掴んだ。
『翔様?』
「ねぇ…来て?」
『はい?』
微笑みながら彼の首に手を回すと…驚いた顔で俺を見返して来る。
「ここで過ごす最後の夜が1人じゃあ寂しいよ。相手してくれない?」
『は…?』
「ふふっ。ね…」
『っっ…翔様…』
乗って来た執事の腕を引っ張りベッドに押し倒す。
「俺上に乗って抱かれるの好き…」
首筋に舌を這わせながらゆっくりと執事の腕を掴む。
『翔様…』
彼の手が俺のシャツに滑り込む。
そして俺は枕元に置いてあったガムテープで一気に彼の腕をぐるぐる巻きに縛る。
『え…?』
「………ごめんね。許して」
『んんっ!!』
そして口もガムテープで縛り、身体をひっくり返して身動きが取れない様に腕と足を縛る。
そして彼のポケットから部屋の鍵を掴んで立ち上がる。
「皆に伝えて。『さよなら』って。じゃあね」
『んー!んー!』
俺は部屋を出て扉に鍵を掛ける。
「智くん…待ってて…」
俺はぎゅっと拳を握り締め、急いでその場を立ち去った。