第20章 2人の道
パタン、と部屋の扉が閉まると、美樹さんは正面から俺に抱き着いて来る。
俺も彼女の背中に手を回して優しく抱き締めた。
ゆっくりと顔を上げる美樹さんの顎をくいっと上げ、優しくキスをする。
美樹さんはうっとりと…俺を見上げていた。
「………キス…初めてだった?」
美樹「………はい…」
「………そっか。おいで」
彼女の手を引いてベッドまで歩き彼女を座らせる。
「………緊張してる?」
美樹「はい。でも…翔さんになら…」
「どうして?」
美樹「翔さんの事が…好きだから…」
「………俺の気持ちは知ってるでしょ」
美樹「………あの方…まだ忘れられないんですか?」
「………そうだね」
美樹「私が忘れさせますから。だからお願い…翔さんの物にして?」
「………この間このベッドで…彼に抱かれた」
美樹「………」
「凄く…痛かった。でも…最高に幸せだったんだ。愛してる人と繋がれたって…。泣いたんだよね俺」
美樹「………」
「それは彼が…俺の事愛してるっていうのもあるんだ。愛し合ってなきゃ…あんな幸せは味わえない。俺は君に…そんな想い…させてあげられない」
美樹「………」
「ごめん」
美樹「いやっ!」
声を上げながら美樹さんは俺をベッドに押し倒した。
そのまま俺に唇を押し付けてくる。
「………」
俺はされるがまま…黙って彼女を見つめていた。
美樹「翔さんっっ…ふぅっ…うっ…ぐすっ…」
泣きながら俺の服を脱がそうとするけど…上手くいかない。
美樹「諦めないから…諦めないっっ…結婚するんだからっっ…」
「………ごめんね…」
美樹「諦めないっっ…諦めたくないっっ…」
「………」
いつの間にか手が止まっていた彼女の涙が止まるまで…俺は背中を撫で続けた。