第20章 2人の道
ー翔sideー
10月25日。
結婚式前日。
結婚式の前夜祭という理由で…櫻井家には沢山の人々が駆け付けていた。
俺も久し振りに自由の身。
けれど…いつもの倍の警備体制を強いられていた。
『翔くん結婚おめでとう』
「ありがとうございます」
『学生結婚だなんて驚いたよ。しかしまぁ…あんな若い綺麗な奥さんなら早く結婚したいという翔くんの気持ちも分かるよ』
「ふふっ。そうですね」
『式の後はそのまま海外に行くのかい?』
「ええ。荷物は送っているんですけど。ホテルに一泊して明後日の早朝の便で…」
『そうかい。最後の夜はゆっくりしたかっただろうに』
「いえ。こうして皆さんに祝福して頂けて…光栄です」
お世話になった人達に笑顔で挨拶をする。
今日がここで過ごす最後の日だ。
本当に…最後の日…。
美樹「翔さん」
振り返ると…笑顔の美樹さんがこちらに近付いて来る。
「美樹さん。疲れてませんか?」
美樹「平気です。明日からは暫く翔さんと2人でゆっくり出来るもの」
「………そうですね」
美樹「………翔さん…」
「はい?」
美樹「少し…お話出来ませんか?」
「どうしました?」
美樹「ここじゃなくて…2人で話したいの」
彼女の手が伸び、俺の服をきゅっと掴む。
「………」
少しうつ向き加減のその顔は…頬が赤らんでいた。
「………いいよ。俺の部屋…来る?」
美樹「………はい…」
彼女の手を引き、俺達は会場を後にした。