第20章 2人の道
「2段目…2段目…」
部屋に1人になった後…机の引き出しをガサガサと漁る。
最後に影山が残した言葉。
『机の2段目の引き出し』
けれど…そこには特に目立った物は無く、俺の大学の教科書が入っているだけだった。
「どういう事…?」
ついでに他の引き出しも漁るが何もない。
きっと何かあるのに…。
影山が俺に残してくれた物…。
「何処だよ…何処っっ!!」
俺は引き出しを引きずり出し、床に投げ捨てた。
引き出しが音を立ててひっくり返る。
「………あ…!」
俺の視界に入ったのは…引き出しの裏。
そこには…透明の小さなビニール袋に入った紙切れと…銀色に光る鍵。
「あった…!!」
俺はテープで貼られたそれをもぎ取り、折られた紙切れを開いた。
『誰にも見つからない様に念には念をいれさせて頂きました。翔様なら見つけて頂けると信じています。翔様、大野様とお幸せになられて下さい。遠くからいつまでも貴方の幸せを祈っております。影山』
「………影山…」
メッセージと一緒に残された携帯の番号。
きっとこれは…智くんの番号。
そして一緒に残された…家の鍵。
その鍵には影山がマジックで書いたんだろう。
『食堂裏口』と書かれていた。
食堂の裏にある…うちの執事達が使っていた外に抜ける通路…。
ここからなら…出られる…!
「影山…ありがとう…」
そして俺は…その紙切れと鍵を元通りに引き出しの裏に張り付ける。
「………待ってて智くん。絶対に…逢いに行くから」
焦るな。
これが最後のチャンス。
その日を見計らって…ここを出る。
それまでは…耐えよう。
俺はぎゅっと拳を握り締めた。