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雪の華【気象系BL小説】

第20章 2人の道


ー翔sideー


数日の入院の後病院から家に帰ると…部屋の内装は変わっていた。


部屋の入口には外からしか施錠出来ない電子ロック。
窓には全ての鉄格子。


完全に閉じ込められた。
………出られない。


「………はっ。俺はマリー・アントワネットかよ」


ぽつりと1人で笑う。


もう…智くんには逢えないのか。
智くんと一緒になれないのなら…もうどうなっても良かった。
結婚でも海外生活でも何でもすればいい。
どうでもいい。


いっそ…ここで死んでやろうか…。
ここに…タオルか紐を結べば首が吊れる…。


鉄格子に手を掛けた時、部屋の扉が開く電子音が鳴った。


振り返ると…父さんと荷物を持った影山が立っていた。


「………影山」


影山「………翔様」


「………」


俺と智くんを引き合わせていた事がバレた影山は…即刻クビになった。
当然だけど…父さんは俺が止めても聞かない。
影山の携帯も即刻破壊され、智くんの連絡先も途絶えた今…俺が出来る事は何も無かった。


翔父「お前の望み通り別れの挨拶だけさせてやる。1分だけだ」


そう言って父さんは少し下がり、俺達を観察する様に見つめた。
どうせ…変な行動を取らない様にだろう。


「影山…」


影山「長い間お世話になりました」


「ごめん…俺のせいで…」


影山「私の意思でやった事でございますゆえ…お気になさらず」


優しく微笑む影山を見ると…ぽろぽろと涙が出てくる。


幼い頃からずっと側に居てくれた影山…。
優しくて…でも厳しさもあって…大好きだった…。
俺の…唯一の理解者を…俺のワガママで失ってしまった。


影山「翔様にお仕えさせて頂いて…この影山、幸せでございました」


「っっ…影山…」


そのまま俺は影山に抱き着くと…影山も優しく抱き留めてくれる。
そして…影山はそのまま俺の耳元に顔を寄せた。


影山「………机の2段目の引き出し」


「………?」


すると直ぐに影山の身体は離れる。


翔父「1分だぞ」


影山「では…これで失礼致します。翔様…翔様の幸せを心から願っております」


深く頭を下げて…影山は…部屋を出て行った。


そしてこれが…影山と会った最後だった。
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