第19章 引き裂かれた2人
ー和也sideー
潤『帰って来い』
ずっとずっと頭に響く潤さんの言葉。
何度も何度もリピートしてる。
その言葉の意味は分かってる。
もう…終わりだと。
関東昇龍会の座は…大野組に明け渡すという事。
これからは大野組に従わなければいけないという事。
でも…分からない。
どうして。
坊ちゃんは…潤さんは…子供の頃から目指してきた。
父親…あの組長に認められる様に…。
潤『俺は昇龍会のトップになる』
口癖だった。
子供の頃からずっと言っていた。
今までも…。
ベッドの上でも何度でも聞いた。
俺は…坊ちゃんのその夢を叶える為に尽くしてきた。
夢を叶えた坊ちゃんの姿が見たい。
昇龍会のトップになった坊ちゃんが見たい。
それがあの人の全てだから…。
なのにどうして…?
大野智なんかに…明け渡すの?
坊ちゃん…どうして?
それでいいの?
俺は嫌だ…。
トップに立つ貴方を見たい。
そしてトップに立つ貴方の隣に立ちたい。
貴方を愛してるから…。
俺は…諦めない。
貴方をトップに立たせるのは…他の誰でもないよ。
この俺だ。
だって…俺は貴方の子分なんだ。
テーブルの上に置いたチャカを手に取り、新しい弾層をセットする。
カチャン…
「………いい音…」
グリップにキスをしてポケットにしまい込んだ。
「これが…大野組での最後の仕事だよ。潤さん…」
俺は立ち上がり、部屋を出た。