第18章 愛の歌
愛しい人の感触を味わいながら…おいら達はずっと無言で抱き合っていた。
久し振りの翔くんの感触…久し振りの翔くんの匂い…。
ここが…おいらの場所なんだ。
他には…ない…。
影山「大野様。今夜はこちらでお休み下さいませ」
「え…?」
影山「一晩でも身体を休めないと…動けなくなりますよ」
「………でも…お父さんが…」
影山「旦那様は明日は8時にはここを出られます。その後…私がおふたりをお連れしますゆえそれまでお待ちを。この部屋は…1番奥の為多少声を出されても聞こえませんので…ご安心下さいませ」
翔「………そ、そっか…ありがとう影山…」
影山「では…ごゆっくりなさられませ。失礼いたします」
「ありがとうございます」
頭を下げて影山さんは部屋を出て行った。
翔「………」
「………」
部屋には…おいらと翔くんだけ。
翔「智くん…お水飲む?」
「うん。ありがと」
翔くんが立ち上がりポットからグラスに水を注ぎ、おいらに渡した。
「ありがと」
水を飲むおいらを翔くんはジッと見つめてる。
「どうしたの?」
翔「智くんがここに居るのが…嬉しくて」
「おいらも嬉しいよ」
翔「でももう…無茶しないで…こんな…」
「翔くん…」
翔「影山がここに連れて来た時…心臓止まるかと思った…。酷い怪我で…呼んでも起きないし…指…智くんの指が…」
ぽろぽろと翔くんの瞳から…涙が溢れる。
詰めた方のおいらの手を優しく握り…包帯の巻かれた小指にキスされる。
「翔くんと一緒になる為だよ。その為なら指なんて何本でもくれてやる」
翔「止めてよ…。ぐすっ…俺の為にそんな事しないで…」
「愛してるから」
翔「………智くん…」
「愛してるよ。こんなに人を愛したのは…初めてだ。初めて逢ったあの日…あの瞬間に…おいら達が一緒になるって…運命が決まったんだ。そうでなきゃ…いきなりキスなんてしない…」
翔「………俺もだよ…。智くんは…俺の全て。他には何も…いらないから」
「翔くん…」
翔くんの涙を拭いながら…おいらはそっと唇を重ねた。