第18章 愛の歌
「う…ん…」
『………くん………とし…くん………』
おいらを呼ぶ声がする。
優しくて…心地良い声。
『としくん……智くん……』
「ん…?」
その声が段々大きくなり…おいらはゆっくりと目を開いた。
翔「智くん…!良かった…!!」
涙目の翔くんが…おいらの隣で手を握ってくれていた。
「あれ…ここは…」
翔「俺の部屋だよ。智くん覚えてない?影山が連れて来てくれたんだよ」
「………そっか…おいら…気絶したんだ…」
翔くんの隣では…影山さんが包帯やらガーゼやらを…箱にしまいながらこっちを見ている。
身体を見ると…手当てされた後だった。
「………すんません…」
影山「具合はいかがでございますか」
「さっきよりは…大分…」
影山「それは何よりでございます」
「どうやって…おいら屋敷の中に…」
影山「シーツにくるんで洗濯物と一緒に運ばせていただきました」
「………なるほど…。ありがとうございます」
翔「関心してる場合じゃないよ智くん。何があったんだよこんなボロボロになって…しかも…この指…」
包帯が巻かれた右手の小指を撫でながら…翔くんは涙を流した。
「………ヤクザ…辞めたんだ。家は継がない。松本とも話した。もう…終わり。ずっと一緒に居られる。だから…さらいに来た」
翔「智くん…」
「大学出たら…一緒に暮らそう?ずっと一緒に…居よう…翔くん…」
翔「ぐすっ…本当に…?俺でいいの…?」
「翔くんが良いんだ。翔くん以外…考えられない。翔くんのお母さんとおいらの父ちゃんが果たせなかった事。愛する人と幸せになる事…おいら達で叶えよう…」
翔「っっ…うん…うん…!」
何度も頷きながら…翔くんは俺にしがみついた。
翔「愛してる…智くん…!」
「愛してるよ…」
もう…離さない。
おいらは横になったまま愛しい人の身体を強く抱き締めた。