第2章 始まりのキス
ー翔sideー
「はぁっ…はぁっ…」
ただがむしゃらに走った。
息の続く限り。
ここがどの辺なのかもう分からない。
とにかくあの場所から早く逃げたかった。
何やってんだ俺…。
初対面の人といきなり…キス…するなんて…。
しかも…男の人と…。
でも…。
気持ち…良かった…。
俺が経験したキスの中で…最高のキス…。
キスしてる時…身体がふわふわと飛んでる様な…。
俺はいつの間にか立ち止まり、そっと唇に触れていた。
「大野…智さん…」
どうしてだろう。
逃げたのは俺なのに…また…逢いたい…。
雅紀「翔ちゃん!!」
唐突に名前を呼ばれ振り返ると、汗だくの雅紀が俺に向かって走って来た。
「雅紀…うわっ!」
そのままの勢いで抱き着かれた。
雅紀「しょおちゃーん!!良かったぁ!!探したんだよー!!」
「ごめん…!俺も探したんだけど電話通じなくて…」
雅紀「そう!そうなんだよ!翔ちゃん居ないの気付いて電話掛けながら探してたらスッ転んで携帯落としてそのまま思いきり踏んじゃってさぁ。壊れちゃったの。帰りショップ寄って良い?」
「あ、うん大丈夫。良かった雅紀…」
トントンと背中を叩くと笑顔で俺から身体を離した。
「しかしスッ転んで携帯落としてそのまま踏むなんて…おバカにも程があるぞ」
雅紀「言わないでぇ!クスクス笑われて恥ずかしかったんだもん」
「ははっ」
直ぐに忘れる。
ただのキスなんだから。
心の奥に終い込み、俺は雅紀と一緒に学園祭の会場に戻った。