第2章 始まりのキス
ー智sideー
今思えば…一目見た瞬間から…愛してたのかもしれない。
だって初めて唇を重ねたあの日…出逢ってから10分も経っていなかった。
それどころか…おいらは君の名前さえも知らなかったのに。
君のその大きな瞳から…目が離せなかったんだ…。
翔「ん…ふ…」
首に手を回し、少しずつ、深く、唇を重ねていった。
重ねてるだけなのに…何だこれ…。
身体が熱い。
芯から痺れてくる…。
そっとそのまま彼を引き寄せようとしたと同時に…曲が終わり、拍手が沸き起こる。
翔「っっ…!」
正気に戻ったのか、彼が慌てて唇を離す。
翔「あ…あの…ごめんなさい…俺…」
顔を林檎の様に真っ赤にしながら…彼はうつ向いた。
「いや…こちらこそ…」
翔「………」
「………」
翔「俺…戻ります。友達探してたから。ごめんなさい…」
「え…あ…あの…」
翔「失礼します」
「ちょっと待って…!」
俺が止めるのも聞かずに…彼は急いで部屋を出て行ってしまった。
「………」
薄暗い部屋に1人取り残される。
「………名前…」
彼が出て行った扉を見つめながら…おいらはまだ感触の残る唇に無意識に触れていた。