第15章 愛する人の為に
「ぐぅ…げほっ…」
ジリジリと…お父さんの指が喉に食い込む。
苦しい…目がチカチカする…。
翔父「返せ…翔を返せ…」
おいらに馬乗りになり、体重をかけてくる。
多分…こんなもん簡単にひっくり返せる。
でも…出来ない。
絞められた腕から…この人の悲しみが伝わってくる。
悲しみと…怒り。
影山「旦那様…!」
止めに入ろうとする影山さんを手を伸ばして制止する。
影山「………大野様…」
「げほっ…」
そのままおいらは…意識を手放した。
「う…」
頭が痛い…。
ズキズキする。
あれ…今度はヒンヤリするな…。
影山「大野様…お気付きになられましたか?」
ぼんやりと目を開くと…影山さんの姿があった。
「あれ…いっつ…!」
起き上がると後頭部に痛みが走る。
影山「コブが出来ておりますのでご無理をなさらずに」
「コブ…?」
影山「覚えてらっしゃらない様でございますね…」
「………確か…お父さんに…」
首…絞められて…意識が…。
影山「大野様が意識を失われて…旦那様が手を離されたらソファーから転がられてしまったのでございます。その時に後頭部を…」
「そっか…すみません」
影山「翔様にも…ご連絡を」
「やば。ここ来るの言ってないんですよ」
影山「そうでございましたか」
「2人で来ようって言ってたんですけど…その前にお父さんと話したくて…。あー…怒られるなぁ」
影山「ふふっ」
「本当に…すみません迷惑掛けて。ベッドまでおかりしちゃって」
影山「いえ。大野様…おひとつお伺いしても宜しいでしょうか」
「はい」
影山「………どうして…止めようとした私を止めたのでございますか」
「………お父さんの気持ちになったら…辛いから。奥さんも…息子も…大野の人間に取られたって…そう思われても仕方ない。だから怒りを受け止めようって思ったんだけど…格好悪かったですね」
影山「そんな事は…」
そんな時、遠くから聞き慣れた声が近付いて来る。
「翔くん…!」
身体をお越しながら扉に目を向けた。