第15章 愛する人の為に
翔父「………1人で何をしに来た」
ギロリ、とお父さんの鋭い眼光がおいらに向けられる。
「お留守の時にお邪魔して…すみません」
翔父「影山。何でこいつを入れた。考えれば分かる事だろう」
影山「申し訳ありません」
翔父「翔を連れて来い。お前と話す事は何もないんだ」
智「お願いします!せめて翔さんの事…許してあげて下さい!」
部屋を出て行こうとするお父さんに向かっておいらは土下座をした。
影山「大野様…!」
翔父「………」
「私の事は…憎んでも構いませんから…」
翔父「………」
「お願いします…」
翔父「………お前も…殺すのか。翔を」
「………違います」
翔父「何が違う。お前の父親は…私の妻を奪った。奪って…殺した。なのにまだ堂々と生きてる。その上…今度は息子?お前は…翔を奪って…殺すのか?」
「殺しません!私は…」
翔父「返せ。俺の息子を…!これ以上…俺の家族を奪うな!!」
「………」
翔父「翔を愛してるなら…返してくれ。どちらの元に居るのが幸せか…。翔を愛してるなら…何が翔の幸せか…分かるだろ?頼むよ…翔を返してくれ…」
「………」
翔くんの…幸せ…。
「………」
お父さんの言葉に…心がぐらついた。
翔くんの幸せ…。
何が…翔くんの幸せか…。
分かってる…。
分かってるけど…でも…俺には…。
「………出来ません」
翔父「何?」
「お父さんが翔くんを許さない限り…ここへは返しません」
翔父「貴様…」
「誓いました。何があっても離れないと。私の隣に居る事が翔くんの幸せだと…そう信じてます。だから…翔くんを許してもらえるまでは…返しません」
翔父「そうか」
お父さんが頷いたのと…おいらに飛び掛かって来たのは…ほぼ同時だった。