第15章 愛する人の為に
影山「精神的にも参られていた時に…大野守様が…陽子様にお気持ちを伝えられ…陽子様も承諾を。しかし…翔様と舞様の事をお考えになられ…お断りしようと決められたのでございます」
「そんな事が…あったんですね…」
「………あの日…最後に大野守様に会いに行かれるその日…陽子様が私にお伝えになられました。『子供達には…本当に心から愛する人と一緒になって欲しい。もしそんな人が出来たその時には…影山。貴方が導いて欲しい』と…」
「………」
影山「あの日に限り私は旦那様のお仕事に同行を…。その為にお1人であのホテルに向かわれました。私が着いていれば…陽子様がお命を落とされる事は…」
「………影山さん…」
影山さんの瞳から…涙が溢れる。
執事の仮面が外れた影山さんを…初めて見た。
きっと翔くんにも見せた事は…無いのだろう。
影山「大野様」
「はい」
影山「陽子様は…翔様が本当に心から愛する人と一緒になられる事を願っております。私は約束いたしました。導くと。ですから翔様と貴方が幸せになれる為なら…お手伝いをしたいと思っております。しかしながら私は櫻井家にお仕えする身。表向きには…出来ませんが…」
「それで十分です。翔くんも喜びます」
影山「もし何かおありならば…この影山にご連絡を」
胸ポケットから名刺を取り出し、差し出される。
「………必ず」
影山「………失礼致しました」
ふぅ、と息を吐き、涙を拭う。
「旦那様も…陽子様の事。そして3人のお子様達を愛しておられます。しかし…愛し方を知らない。大旦那様も…愛し方を知らないお人だったと…思っております」
「影山さん。話しにくい事…話してくれてありがとうございます」
影山「いえ」
その時…こちらに向かって来る足音が聞こえて来る。
時計を見るといつの間にかかなりの時間が経過していた。
影山「旦那様です」
おいらが影山さんの名刺をポケットに入れたと同時に…応接室の扉が開いた。