第15章 愛する人の為に
ー翔sideー
智姉「初めまして。智の姉の三奈です」
「は、初めまして。櫻井翔といいます。お留守の間にお邪魔して…申し訳ありません」
智姉「そんな。気にしないで下さい」
俺が大野組に厄介になり始めてから数日。
お友達と旅行に行っていた智くんのお姉さん、三奈さんが帰って来た。
組長の部屋で向かい合い…正座して深く頭を下げる。
智姉「礼儀正しい人ね」
「いえ、そんな…」
智姉「それに智が言ってた通り。綺麗な子ね」
智「だろ?」
「さ、智くん…!き、綺麗なんかじゃ…」
智「翔くんは美人だよ」
「あ、ありがとございます…」
ストレートな智くんの言葉は嬉しいけど…人前で言われるとどうしていいか分からない。
きっと俺今…顔真っ赤だ。
智姉「極道の家なんて…色々大変な所だけど…一緒に頑張りましょうね」
「はい!」
伸びてきたお姉さんの手を握り、俺はまた深く握手した。
智姉「暫くはここに居るの?」
「………はい。勿論いずれは実家にもどりますけど…」
智父「焦らなくていいぞ。ゆっくりでいい」
「ありがとうございます」
松岡「失礼します。お帰り」
ふすまが開き、松岡さんが部屋に入って来る。
そしてお姉さんの隣に座った。
智姉「ただいま帰りました」
松岡「楽しかったか」
智姉「ええ」
幸せそうに話す2人を俺は羨ましく思った。
俺も早く智くんと…そう言うカップルになれたらいいなと思った。
智姉「あ、あのね今朝分かったんだけど…皆に聞いて欲しい事があって…」
智父「どうした三奈」
松岡「ん?」
智姉「………赤ちゃん、出来たの」
松岡「………」
智「マジか…」
智父「それは…でかしたな三奈!」
「わぁ…」
喜びに溢れる智くんとお父さん。
そんな中で…静かに目頭を押さえる松岡さんに俺は…ほっこりした気持ちになったのだった。