第15章 愛する人の為に
覚悟した頬への衝撃が無く、うっすら目を開けるとそこには…知念さんの腕を掴む松岡さんの姿があった。
侑李「松岡さん…」
松岡「知念。そこまでにしておけ」
侑李「何で庇うんですか…!松岡さんはいいんですか?こんな奴大野組に入れて」
松岡「じゃあお前は…何でそんなにこの人を拒絶するんだ。ぼんの恋人だからか?それだけか?」
侑李「だって…」
松岡「大人になれ知念。好きな人の幸せを願う事も…愛だぞ。それが出来ればいつか…お前も幸せになれる」
侑李「………」
松岡「櫻井さん。どうぞ」
松岡さんにタオルを差し出され、俺はそれで顔を拭いた。
「ありがとうございます…」
侑李「失礼します」
そのままキッチンを飛び出そうとする知念さん。
「知念さん!」
俺はその背中に声を掛ける。
知念さんは背中に向けたまま…立ち止まった。
「貴方を傷付けて…ごめんなさい。それに酷い事言ってすみません。でも…貴方にもいつか認めてもらえる様に俺…頑張りますから。大野組の人達は家族だと…彼は言ってました。智くんの愛する家族を…俺も愛したいと思ってます。知念さん…貴方も」
侑李「………」
何も言わずに知念さんは出て行った。
松岡「櫻井さん…少し変わりましたね」
「え?」
松岡「腹が座りましたね」
「そう、かな…」
松岡「ええ。すみません正直何も出来ないお坊っちゃんだと思ってましたが…強くなった」
「そんな…」
松岡「でも…もっと強くなって下さいね。多分色々大変なのはこれからだと思いますから」
「ありがとうございます」
松岡「小さいお茶のペットボトル…入ってますから持ってっていいですよ。それじゃ…お休みなさい」
「ありがとうございます。お休みなさい」
笑顔でキッチンを後にする松岡さんに頭を下げる。
冷蔵庫からペットボトルを貰い俺も智くんの部屋に戻った。
侑李「………認めない…。俺は認めないぞ…。櫻井翔…!智さんを奪った事…きっと後悔させてやる…」