第15章 愛する人の為に
ー翔sideー
ふと目を覚ますと…まだ外は真っ暗だった、
壁掛け時計を見ると…まだ3時。
「喉…乾いたな…」
冷たい飲み物が欲しい。
隣を見ると…俺の恋人は俺を抱き締めながらスヤスヤと寝息を立てていた。
「ごめん…飲み物貰うね」
智くんを起こさない様にベッドを抜け、部屋を出た。
「えーと…確かこっちだったよね…」
薄暗い廊下を歩いていると… 見張りをしていたのか、ウロウロする組員の姿が見える。
その中には…あの知念という男の子も居た。
俺に気が付くと…スタスタと歩み寄って来る。
侑李「何?」
「あ、ごめんなさい…喉乾いちゃって…よかったらお水頂けたらと…」
侑李「………来いよ」
少し不満そうな顔をしながらも知念さんは俺をキッチンまで連れて行ってくれた。
頭を下げて彼に着いて行く。
棚からグラスを取り出し、冷蔵庫にあるペットボトルから麦茶を注ぐ。
侑李「………」
「あ、ありが…」
手を出すと…その麦茶をパシャッと顔に掛けられる。
ぽたぽたと床に滴が落ちていく。
侑李「調子乗んじゃねぇよ」
「………」
侑李「オヤジが許したからってズケズケと我が物顔で入り込みやがって。さっさと家に帰れよお坊っちゃんが…」
「………すみません」
濡れた顔を素手で拭いながら…俺は知念さんに頭を下げた。
「でも…彼の隣に居ると決めたんです。ここに居る事が彼の側に居る事になるのなら…ここに居る覚悟です」
侑李「勝手に覚悟すんなよ。迷惑だ。言っただろお前なんか直ぐに飽きられるって。遊びなんだって」
「………いえ。信じてます。彼の気持ちを」
侑李「は?ふざけんな」
「ごめんなさい。貴方には…渡せません」
侑李「はっ…。まだセックスもしてねぇくせに…!俺がどんだけ智さんと…」
「どれだけ寝たかなんて関係ありません。一緒に居られるだけで…幸せなんです。肌を重ねる事でしか繋ぎ止められない貴方には分かりません」
侑李「お前っ…!」
彼の手が振り上げられる。
俺は目を閉じて…頬に来る衝撃を覚悟した。