第14章 父と母の恋
ー智父sideー
『陽子…!』
翔母『守さん…!』
待ち合わせの日。
愛する女の姿を見た瞬間、俺は立ち上がり、彼女の元へと走った。
『来てくれないかと…』
翔母『………来るわよ勿論』
そっと微笑む彼女の笑顔はどこか悲しそうで…気付くと一緒に居る筈だった2人の子供の姿は見えなかった。
『陽子…子供達は…』
翔母『………守さん…ごめんなさい』
『陽子…?』
翔母『やっぱり…私行けない。ごめんなさい…』
『どうして…』
翔母『やっぱり私は…女である事より…母親である事の方が大切なのよ。私の勝手で父親と離す事は…出来ない』
目の前が真っ暗になった。
『もう…これきりって事か…?』
翔母『………はい…』
『俺は…俺は出来ない!やっと…やっと君と生涯を共に過ごせると思ったから…だから…』
翔母『守さん…』
『やっと言えたんだ。陽子…君を愛してる。世界中の誰よりも…愛してるんだ。もう…手放したくない』
その華奢な身体を俺は強く抱き締めた。
翔母『貴方と出逢えて…良かった…。愛される喜びを…貴方は教えてくれたのよ。これからはその事を胸に…生きていくわ』
陽子の手が…俺の背中に伸びる。
翔母『私も…愛してます。守さん。世界中の誰よりも…』
『陽子…』
離したくない…。
『………時間は…ないのか…?』
翔母『………どうして?』
『君と子供達をかくまう為に…部屋を取ってあるんだ。最上階の部屋を…』
翔母『………』
『最後に…最高の思い出を…くれないか。俺に…』
暫くの間…陽子は押し黙った。
そして…
翔母『………いいわ。守さん…私も思い出が欲しい。私を…抱いて下さい…』
そして俺は陽子を連れて…ホテルのエレベーターへと移動した。