第14章 父と母の恋
ー智sideー
父ちゃんから発せられた言葉は…あまりにも衝撃的で…言葉を失ってしまう程だった。
智父「私と陽子は幼馴染みだった。小学校が一緒でな…よく一緒に遊んだよ」
懐かしそうに…智くんのお父さんは微笑んだ。
智父「でも中学に入る頃には遊ぶ回数も減っていった。陽子はよく声を掛けてくれたが…一緒に居る事で…彼女が危険にさらされる事もあったからな。それだけは避けたかった。それに陽子の家も…資産家の娘だ。私と居る事をよく思っては居なかった」
「お嬢様だったんだね…」
翔「お爺様は華族の出だったから…」
「ほぇー…」
やっぱり翔くんて…ぼんぼん…。
智父「高校は当然の如く別々になった。私はまぁ…あまり素行が良いとは言えない高校に行って…彼女は私立の有名な高校。その頃だったかな…風の噂で『婚約した』と聞いたのは…」
翔「うちの…父…ですか…?」
智父「そうだ。絵に描いた様な政略結婚だったと聞いてる。櫻井の家の肩書きに…陽子の家の資産が必要だった」
「翔くん…知ってたの?」
翔「お見合い結婚だったのは知ってたけど…そんな感じなのは…」
「そっか…」
智父「結婚したのは陽子が高校を卒業して直ぐだったな。櫻井が警視庁に入ったばかりだったか」
智「そんなに早かったんだ…」
智父「今でも…忘れられない。あいつが…結婚式の前の日に…私の所に来たんだ」
翔「それで…」
智父「………『私を連れて逃げて』そう…言った」
「それで父ちゃん…どうしたの」
智父「逃げてたらここでこうしてない」
翔「どうして…逃げなかったんですか」
智父「極道の妻にする事なんて出来なかった。それに…逃げて一緒になったとしても…陽子を不幸にするだけだと。櫻井と結婚した方が…幸せになれると…そう思った。だから私は…泣いて俺にすがるあいつの腕を…離したんだ」
翔「………」
父ちゃんの瞳から…一筋涙が伝っていた。